ユニフォームプロジェクトvol.1【リンデンホールスクール】新しい体操服をSDGsプロデュース
Insect Collectionのユニフォームプロジェクトがついに始動します!
学校制服は、ドレス効果でよく語られるトピックの一つです。
[blogcard url=”https://insect.market/blog/media/dress-effect/”]
ずっと不思議に思っていました。
これだけSDGs教育の重要性が叫ばれ、サステイナブルファッションや食育が注目される中、なぜ制服などをはじめとした学校設備や環境には変化が感じられないんだろうと。
子どもたちにとって一番身近ともいえる学校環境こそ、本来は一番最初に変わるべきであるはずです。
リサーチすると、少しずつ変化は存在しました。
しかし、国や自治体ごとに決められた方針や具体案が存在しないため、各学校が模索しなければ、変革は起こり辛いのが現実でした。
また、さまざまな家庭環境に配慮する必要性もあります。
さらには教師の人員不足などが叫ばれ、授業のカリキュラムを全うするだけで手一杯の学校環境では、学校だけで進めることは困難です。
それならば、学校側の努力を求めるだけではなく、さまざまな分野の企業や団体が具体的なアイディアを提案し、サポートすべきなのでは?
以前よりそう考え、学校のユニフォームをサステイナブルなものに変革するプロジェクトに挑戦したいと願っていました。
第一弾ユニフォームプロジェクトについて
そしてついに、ユニフォームプロジェクト第一弾として、福岡県にある学校法人都築育英学園が運営する国際バカロレアと英語イマージョン教育を提供する一条校「リンデンホールスクール」のPEユニフォーム(体操服)をプロデュースさせていただきました。
リンデンホールスクール中高学部は、文部科学省のカリキュラムに沿った学習指導を行う一条校(※1)でありながら、国語以外のほぼ全ての授業を英語で行う「英語イマージョン教育」を実施し、国際的な教育プログラムであるIBプログラム(※2)を採り入れている、急速に変化し続ける国際社会に通用するグローバル人材の育成を目指す学校です。
この知育記事でもアートリテラシーや日本文化、インターナショナル教育についてお話ししていますが、それを全て実践されている学校です。
Insect Collectionは、服育ブランドとして3年前にスタートし、服育の究極とも言えるユニフォームに関わることは長らく念願のプロジェクトでもありました。
全国の学校を見学したり、情報収集する中で、ご縁あって今回のリンデンホールスクールにお邪魔した際、「理想の教育環境」の一つであると感じ、ぜひ第一弾はこの学校と挑戦したい!とご提案させていただきました。
嬉しいことに私たちの想いに賛同していただくことができ、このたび実現することとなりました。
リンデンホールスクール小学部
https://lindenhall.ed.jp/elementary/
リンデンホールスクール中高学部
https://lindenhall.ed.jp/highschool/
※2…IB(インターナショナル・バカロレア)とは、国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラム。「多様性を理解、尊重する精神」「自分の頭で考えて論理的に伝える力」「他者と協力できるコミュニケーションスキル」など、急速にグローバル化する社会に対応するスキルが身につけられることが特徴です。
プロジェクトの主役はあくまでも「生徒」
プロデュースと言っても、私たちが主体的にデザインを行なったわけではありません。
素材選び、製造工程、デザインに至るまで、考えたのは有志の生徒さん。
私たちはあくまでも、サステイナブルな物作りのガイドラインに沿って、ディスカッションの進行をしたようなものです。
普段物作りをしている私たちのような企業にとって、サステイナブルな素材に切り替えるということは、さほど難しいことではなくなりました。
しかし、世界で起こっている社会課題を背景に、一つ一つの判断を行なっていくことが、消費者として、SDGsの担い手となる人材として、服を着る人間という生き物として重要です。
単なるベンダーとして服の製造をしたいわけではないということを校長先生はじめ、教員の皆さんと話し合い、プロジェクトをスタートさせました。
今回取り組んだのは、幼稚園や小学校。。。ではなく、なんと中高生が対象。
全く私たちのブランドのことを知らない生徒たちです。
不安もありましたが、挑戦したかった理由があります。
現在、小学生は学校で環境に関する授業を受けます。
あらゆる問題の原因のほとんどが、たったこの100年以内の経済活動によって引き起こされたことを子ども達は知り、そのおかげで自分たちの未来は奪われつつあると覚ります。
大人から環境を学ぶことの違和感は想像に難くありません。
今の状況を作ったのは私たち親以上の年代であり、子ども達は完全に被害者です。
しかし、今後年齢を重ねて大人になった時には、今度は子ども達に生きる力、知識を伝えていく必要があります。
とはいえ、大人になったからやりなさい!といわれて、誰しもが突然できるようになるものではありません。
学校生活、異年齢の交流などで少しづつ育んでいくことが重要なのではないでしょうか。
そこで、幼稚園や小学生から見ると、これからの厳しい時代を共に生きる少しだけお兄さんお姉さんである中高生に環境の先生になってほしいと考えました。
実際にリンデンホールスクールの小学部に教えに行ってもらいましたが、子ども達は目をキラキラさせて中高生の発表を聞いていたのが印象的です。
聞いていた小学生たちが、中高生になったらやってみたい!と感じられ、世代間で知識を受け継いでいくきっかけになればこれ以上のことはありません。
<発表の様子>
リンデンホールスクールについて
私たちが 「理想の教育環境」の一つであると感じた、リンデンホールスクールの学校環境や取り組みの一部をご紹介させていただきます。
自然豊かな校庭
小学部の校庭には、一般的な遊具はありません。
本格的な木製アスレチックが広大な里山の中に作られ、天然の地形を使って、子ども達は様々な遊びを発明していました。
いろいろな昆虫や植物と触れ合い、その変容で四季を感じることができるそうです。
茶道や陶芸などの日本文化学習
校庭の一角には、美しいお茶室と陶芸室。
福岡の八女茶をはじめ日本各地の日本茶や季節の和菓子を、お手前を学びながらいただく授業も。
その土地の味と日本の文化を学び、英語で世界に発信する。
グローバル人材を育成する教育であるからこそ、他国の文化を理解し尊重できるようになるために、日本の伝統文化や大和心を会得して欲しいのだという和魂英才の精神に感銘を受けました。
アートの授業
アートのお部屋は、全面が既に芸術が溢れており、さながら美術館のよう。
子ども達もアートの授業は、アウトプットの一貫としてナチュラルに楽しんでいる様子でした。
SDGsについての取り組み
もちろんSDGsの活動も活発で、学校のエントランスには社会課題解決に向けた研究レポートなどSDGs関連のワークが掲示されていました。
給食とカフェテリア
給食は、野菜とお米は全て地元にある有機農法、完全無農薬栽培を行う農園で採れたものを使用する「オーガニック給食」を2020年から日本の一条校で初めて通年体制で実施しています。
卵は地元養鶏場の朝採れ、肉や魚は国産のものを使用。
また、プラントベースミートなども使用し、畜産の環境負荷について考えるなど、食育の観点から環境問題やフードロスなどの社会問題に意識を向ける機会を多く設けているそうです。
カフェテリアと呼ばれる食堂にはピアノがあり、生演奏を聴きながら食事をするという見たことのない光景が。
食事は五感のトレーニングの絶好の機会。生演奏が味に与える影響をも計算されているとしか思えませんでした。
そして、給食代が普通の給食代と差がないのにも驚きました。
地元のオーガニック農家と契約し、輸送費をかけないことで実現しているそうです。
私立だからと言って、家庭の費用負担に妥協せず、また、安定した利用があることで、地元農家や企業の応援にも繋がります。
プロジェクトの様子
SDGsのセミナーでは、INSECT MARKETの取り組みも興味深く聞いてくれました。
国際的な社会課題や、身近なゴミの問題まで様々なトピックについて話しました。
また、普段環境の授業されている先生方にも、私たちの暮らしや社会の活動が、地球資源にどんな影響を与えるかということを俯瞰するためのワークショップをさせていただきました。
アパレル業界の環境影響についてお話しした後、ある生徒さんから質問をもらいました。
「服は新しく買わない方がいいのでしょうか。」
それも一つの選択肢。
でも、今トレンドワードのように言われるSDGsの活動に終了日はなく、生きている限り継続しなければなりません。
服を買わないことに不自由を感じない人もいます。それならそれもいいでしょう。
でも、ドレス効果という言葉があるほど、心理的な影響もある服を着る人間特有の習慣を楽しみ、生き甲斐にさえしている人もいます。
価値観を大切にした上で、環境負荷を減らすためにサステイナブルファッションというソリューションがあるという話をさせていただきました。
今人類が面している問題に何の過失もない子ども達が、笑顔で過ごせるようなユニフォームや洋服を提供していきたいと改めて強く感じました。
今回、何度でも再生できる唯一無二の技術、日本環境設計社のBRING Technology™を使用した素材にしたいと考え、実際に北九州にあるリサイクル工場や、環境について学べる環境ミュージアムにも見学に行きました。
また、特別に日本環境設計の岩元会長によるオンライン講演も実施いただきました。
デザインについては、リンデンホールスクールとして初めてジェンダーレスの体操服にすることを予定しており、Linden HallのLとHをモノグラムにしたテープをサイドに配することを検討しています。
そして、、、、、出来上がったサンプル体操服はこちら!
Insect Collectionのタグも特別仕様です。
このプロジェクトではカマキリのロゴを入れるは必要ないと私たちは考えていました。
しかし、生徒のみなさんや学校の皆様から入れたいという要望をいただき、一般のお洋服と同じように背面に特別仕様で入れる予定です。
春から生徒たちがサステイナブルなPEユニフォームを着て、クラブ活動や体育の授業を受ける姿を見るのが今からとても楽しみです!
今後の制服プロジェクトについて
Insect Collectionの制服を通して、サステイナブルな活動に参加するワクワクを全国の学校に届けたいと考えています。
それは私たちだけでは到底なし得ません。
制服は、ただファッションを楽しむための洋服ではないからです。
最も特殊なのは、求められる耐久性の厳しさかもしれません。
私たちが普段行っている検品項目、基準とは全く異なります。
3年間、毎日来ても耐えられる学校制服は、到底私たちが容易に参入できるものではありませんでした。
令和の制服は、現在の保護者世代が使っていた時代の制服とは、もう別物といっても過言ではありません。
ブレザーや学ランは着ているうちに嫌なテカリがなかったでしょうか。
そんな制服はもはや稀。金タワシで強くこすっても、毛羽立ちひとつ起こりません。
洗濯機でお洗濯できるのは当たり前。今はシャワーで流すだけで汚れが落ちるものも。
成長対応機能という、お直しなしで2cm袖が伸ばせる特殊な縫製があったり、勉強や自転車通学などで前屈み姿勢の多い学生のために、脇下の裏地だけ伸びる素材が採用されていたり、防臭、防汚、抗菌、抗ウイルスも当然の配慮と、至れり尽くせり。
パンツの裾の調整なども含め、半分オーダーメイドのような学校制服市場。
また、ジェンダー対応で、ブレザーの右前・左前が変更できたり、女子用・男子用という表現もしません。
そんな驚きの制服を作っているのが創業150年以上の株式会社明石スクールユニフォームカンパニー。
制服の町、岡山県に本社を置く、学校制服のリーディングカンパニーです。
そして、株式会社明石スクールユニフォームカンパニーと、私たちがリサイクルでパートナーシップを組ませていただいている日本環境設計が進めるRe-Ring Schoolという何度でも制服を再生できるプロジェクトに着目しました。
[blogcard url=”https://insect.market/blog/media/bring-polyester/”]
私たちInsect CollectionがRe-Ring Schoolとタッグを組むことによって、単に制服をサステイナブル素材に変更するだけではなく、なぜ変革が必要なのか、この変革によって何が変わるのか、私たちは何を学ばなければならないのかを伝えるプロジェクトがスタートします。
環境保護の面から見ると、洋服は30回以上着るかどうか、というのは洋服購入の目安の一つとも言われていますが、制服の使用回数は30回どころではありません。
耐久性のある制服なら、洋服の消費を減らす効果もあります。
環境配慮された制服、そのリサイクルシステムはもちろん、購入者全員にマイクロプラスチック流出を防ぐ洗濯ネットをプレゼントし、再生ポリエステルであってもケアひとつで環境貢献度は変わること、ひとつのアイテム・技術によってそのリスクが低減できることなども周知していきたいと思います。
制服は仲間意識、帰属意識、愛社愛校意識を醸成するドレス効果が高い洋服であるとも言われています。
また、多くの子どもたちにとって「大切に長く着る、使う」という体験をする、最初の洋服であることは間違いありません。
毎日の服選びや購入管理に憂慮することがなくなり、その分お休みの日の洋服選びを自由に。
制服は個性の成長を阻害するとは私たちは考えていません。
適切な教育環境のもとであれば、あくまでも快適に過ごすための効果的なツールの一つのはずです。
現在、日本の小学校はほとんどいわゆる「制服」が導入されていません。
私たちの活動によって、小学校の制服(標準服と呼ばれることもあります)のメリットも広がってくれたら嬉しいです。