リアルな昆虫のイメージを使わない理由
Insect CollectionやINSECT LANDには、写実的な昆虫の絵や、昆虫の写真が登場しません。
昆虫好きの、昆虫好きによる、昆虫好きのためのブランドのように聞こえるブランド名ですが、私たちの目的は、昆虫から生きる力を学んでもらうことや、自然の重要性を親子で再認識してもらうことです。
しかし、昆虫が苦手なパパママからは、「子どもには自然や昆虫を好きになって欲しいけど、自分は見られない。」「考えただけで寒気がする。」といった声も多々あります。
では、小さな子どもに昆虫が苦手な子が少ないのはなぜでしょうか。
なぜ、親が昆虫好きだと、子どもも昆虫好きに育ちやすいのでしょうか。
逆になぜ、親が昆虫嫌いだと、子どもも昆虫嫌いになりやすいのでしょうか。
私が以前住んでいたインドネシアのバリ島では、とんでもなく大きいGも出ましたが、現地の人々は驚くどころか、ノーリアクションでした。
誰も殺虫剤を持って追いかけて来ないからなのか、動きも遅かったです。
ヒアリなど含め危険な虫も沢山いましたし、食べ物に虫がついていたりしますが、「ここは虫の住む場所でもあるから。」と言わんばかりの様子で、彼らは共存していました。
そんな親を見て育つ子どもは、当然に虫を怖がることはなく、共存精神がループしています。
日本では、Gが出ると大騒ぎ。一生懸命殺そうと必死になります。
その周りの大人姿を見て、「虫は気持ち悪いものなんだ。」と子どもは刷り込まれているのではないでしょうか。
『生理的に無理』という心理状態には、いくつか種類がありその内の一つに『危機察知のため』という役割があるとされています。
腐ったものを食べないように、未知の匂いであっても拒絶したり、治安の悪い場所や、不潔な場所などを避けたり。
昆虫も、危険を伴う種類は存在するので、強ち間違った反応ということでもないのかもしれません。
『生理的に無理』な対象を、好きになってもらうことは難しく、冒頭の目的を果たすことを趣旨とするならば、その努力は非効率的です。
「自然環境のために好きになってください!」と言ったところで、『無理なものは無理』というのが生理現象だと思います。
意識の刷り込みループを断ち切るには、パパママに昆虫が生態系を支え、循環型社会を作ることの重要性を認識してもらい、「子どもには昆虫を好きになってもらう」という意識で接していただく必要がありました。
だからこそ、クリエイティブは、昆虫嫌いでも可愛いと思えるデザインであることがとても重要です。
実は、社内には昆虫が苦手で写真は見られないというスタッフもいます。
アイテムを試作する前に、彼女が見ても可愛いと思うデザインになっているかも、重要なチェックポイントとなっています。
クルーロウ華子さんに描いていただいた大人気の昆虫イラストも、ホタル、カブトムシ、クワガタは、茶色や黒系なので、遠くから見た時にGの雰囲気を出さないようなプリントの大きさや配置する数を意識しています。
『昆虫嫌いな私でも可愛いと思う。』と選んでくださるのは、スタッフ一同願いが通じたと感じるとても嬉しい瞬間です。
これからも、昆虫が好きでも苦手でも愛していただける物作りで、子どもの学びに貢献してゆきたいと思っています。